リフォームでできないことは、基本的にはありません。
子ども部屋を設けたい、収納を増やしたい、キッチンを使いやすくしたい…といった希望は、リフォームの手法である増築・改築・改装・模様替えなどで実現できるものです。
しかし、安全に住むことができる健全性のある建物にするためには、難易度が高い、コストが膨大になってしまう、避けたほうが良いリフォームもあります。
その建物は本当にリフォームしてまで住み続けたほうが良いのか。建て替え、住み替えの方が経済的で安心して暮らせるのではないか・・・。
リフォームを計画する前に、ちょっと立ち止まって考えた方が良い場合について、紹介します。
目次
1.実は新築より難しいリフォーム工事
新築と違ってリフォーム工事は、特別な資格がなくてもできることも多いです。
ちょっとした模様替え程度のリフォームであれば、DIYでもできる範囲なので業者はおろか個人でも対応可能です。
そういったところから、リフォームは簡単に出来そうなイメージがあるかもしれません。
しかし、リフォームの規模が大きくなればなるほど、その工事は実は新築よりも難しいものになります。
建物の構造体に手を加えるようなレベルになると、新築を建てる時とはまた別の建築的な知識と経験が必要になります。
特に構造を理解していないとプランを立てることすらできない、非常に専門性の高い作業になるのです。
1-1.他人が造った建物に手を加える作業
実際に作業する業者、すなわち大工さんにとっても大規模なリフォームは難しいものです。
リフォーム工事の多くの場合は、その建物の新築時とは異なる大工さんが手がけるので、他人が作った既存の家に手を加えなければならないからです。
さらに、「今の家をもっと使いやすく、快適にしたい」という建築主の要望を実現させるためには、施工技術だけではクリアできない問題があります。
その難しさを、次に詳しく説明します。
1-2現状把握が難しく手間がかかる
リフォーム作業は既存の建物がどういう状態なのかを把握しておくことがまず第一です。
その建物のどこに問題があり、どう改善していくのか、プランを立ててそれが実現可能か検討するにも、現状チェックは欠かせません。
それには、設計図、付近見取図などの確認申請図書類(確認済証を含む)、検査済証、そして竣工図と施工図があれば手間はかなり省けますが、多くの場合は揃っていません。
築年数が進んでいるとなおさらです。
図面がなければ面積さえ分からないので、実測からスタートすることになります。
構造部分はもちろん、配管や配線もチェックしなければいけないので、膨大な時間と手間がかかります。
しかし、改修や改装を行うのが例え建物の一部だったとしても、構造が絡む場合はこの地道な作業は必要になります。
リフォームを行うことは建物全体のバランスを変えてしまうことでもあるので、基本的に、構造に関しては建物全てについて把握していなければなりません。
1-3.現行の建築基準法などに適合させる必要がある
申請が必要となる増改築については、既存の建物の完了検査済証がなければ受け付けない場合もあるので、法的なチェックを行う知識や経験が必要となります。
既存の建物の確認申請図書類(確認済証を含む)がなければ、新たに申請図書を作成して、既存部分も含めて申請し直す作業もあります。
1-4.劣化状況の的確な把握
図面があり、柱や梁のサイズが分かったとしても、経年変化などによる老朽化については別に把握しなくてはなりません。
建物のおかれていた環境などによっても劣化の度合いは大幅に変わります。
まず目視でチェックし、対象によっては検査機器類を使用して確認することが必要です。
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2.構造・構法を変更する、手を加える工事は難しい
リフォームはもともとある家を手直しする作業なので、無の状態からはじめる新築のように自由にプランを作ることはできず、制約があります。
もしくは、不可能ではないけれども非常に難しく、経済的にもリフォームの効果としてもあまりおすすめできない場合があります。
例えば四角い建物を円筒形にするなどといったことは、不可能ではありませんが、リフォームの範疇を超えたものになってしまいます。
また、木造住宅からログハウスなど個性的な建物に住みたいと希望するようなケースですが、この場合は、完全な建て替えになってしまうので、リフォームとは呼べません。
2-1.リフォームしやすい構法・しにくい構法
リフォームできるかできないか、で言うとリフォームできない構法はありません。
模様替え程度であれば、構法による制約はありませんが、構造体に手を加える工事になると、構法ごとにクリアするには難しい場合もあります。
2-2.比較的リフォームしやすい木造軸組構法
柱や梁で骨組みを造る木造軸組み構法は、壁を抜くのが簡単なので、構造的な考察が十分になされれば、他の構法に比べてリフォームの融通性が高いと言えるでしょう。
ただし、筋交いを入れたり合板を使ったりした耐力壁を設けている建物は多いので、壁を抜いたり、窓を動かしたりすることにまったく制限がないわけではありません。
そのようなプランは、事前の入念な調査が必要です。
2-3.壁や床を抜くのが難しいツーバイフォー
床や壁が一体となって全体を支える構造になっているツーバイフォーは、2階の床を抜いたり、開口部を移動したり、壁をとって広くする、といった大規模リフォームは非常に難しくなります。
例えそれが耐力壁ではなくとも、特殊な金物や接着剤で強固に取り付けられているので、その家を建てた施工者や設計者に相談することが必須です。
2-4.RC造では構造体をいじらないのが基本
住宅に多い壁式RC造は、建物すべてが一体となっているので、壁を抜くような工事が非常に難しいです。
構造体は以外の間仕切り壁は自由に移動させることができますが、構造体には手を加えないのが基本です。
2-5.RC造同様、構造体の変更が難しい鉄骨造
木造軸組み構法のように、柱と梁で骨組みが造られている鉄骨造。
間取りの変更度は高いのですが、RC造同様、構造体に手を入れることはかなり大変です。
2-6.プレハブ住宅はメーカーに問合せを
あらかじめ検査した構造を工場で造っておき、現場でパーツを組み合わせるプレハブ構法は、メーカーによってつくりが異なります。
どの程度までリフォームできるかは、メーカーに問い合わせるのが良いでしょう。
3.欠陥住宅のリフォーム
欠陥住宅とは、設計や施工、そして工事監理に問題があった建物です。
そのほとんどが、建物の構造に問題がある場合が多く、リフォームそのものができない、しない方が良いことがあります。
3-1コストが高く、安全性も確保できない
建物の基礎に問題があった場合、修補の方法はあります。
例えばアンダーピーニング工法という、地中に鉄骨を埋め込み、基礎を保持するような方法が挙げられます。
しかし、コスト的に非常に高くつきますし、あくまで対処療法なので、地盤の状況によっては安全性が確保できない場合があります。
また、平屋を構造的な考察なしに2階建てにしたような建物を、さらに修補や改修で健全な建物にするとなると、完全に不可能です。
大規模リフォームを行う前の作業として必要不可欠な構造的な考察ができない建物は、リフォーム工事後に倒壊してもリフォーム以前の修補や改修に問題があったのかもしれないので、責任をとることができないのです。
こうした建物であっても、建築主の自己責任において修補することは可能ですが、保証がない建物になってしまい、安心して住むことができません。
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4.平屋を2階建てにするリフォーム・増改築
平屋だった建物を2階建てにする、一見できそうなリフォームですが、実は大変に危険でコストもかかってしまいます。
場合によっては2階建てを新築した方が良いこともあるので、充分に検討が必要なケースです。
4-1.技術的には可能だが構造上は危険
平屋から2階建てへの増築は技術的には可能です。
しかし、実際にそのように増築したリフォームには大変危険なものが見受けられます。
平屋から2階建ての増築に限らず、増築・改築に際しては既存建物の状態のチェックが欠かせません。
そして、平屋の状態でチェックした時に問題がないと考えられた住宅でも、その上に2階を増築するとなると、話は別です。
平屋を2階建てにすると、既存の平屋部分の柱や梁、土台、基礎などに重量がかかり、大きな負担となります。また、2階の重さが増えるので、当然地盤にもそれまで以上の大きな負担がかかります。
そのため、既存の平屋の基礎に2階建ての重量を支える力があるのか、増加した荷重に地盤が耐えられるかどうかを構造力学的に解明するために、調査を実施する必要があります。
こうした構造的な視点を持たずに平屋から2階への増築を行うのは非常に危険なことなのです。
4-2.通し柱は絶対必要
建築基準法では、2階建ての建築物には通し柱(基礎から小屋組まで一体になっている柱)が必要と、と定めています。
平屋から2階建ての増築でこの条件をクリアするためには、既存の建物を囲うようなかたちで基礎を造って通し柱を建て、通し柱と既存の建物の柱をボルトなどで緊結して一体化させる、という工事が考えられます。
大地震をはじめとする大災害にみまわれた時に、構造耐力上の安全性が倒壊するかしないかの差となって現れるので、例え手間とコストがかかっても必要な作業となります。
4-3.平屋から2階建てはとてもハードルが高い
地盤調査を行い、基礎を造り、通し柱を建てるとなると、かなりの費用がかかります。
場合によっては新たに2階建てを新築した方が安くなる可能性もあります。
平屋から2階建てへの増築は不可能ではないですが、とてもハードルが高いと言えます。
4-4.防音効果を高めるリフォームをしても、完全な防音は難しい
リフォームで壁や床の素材を変えるなどして、防音効果を高めることは可能です。
しかし、空気が通る隙間があれば音は伝わっていくものです。
防音ルームのように独立した部屋は別として、建物全体では必ずどこかに排気口や吸気口があるので、完璧な防音にはできません。
5.リフォームによるシックハウスの原因の完全な除去
シックハウス症候群は、建築材料に含まれる化学物質やカビ・ダニが原因で起こるとされています。
改善するには、原因となる建築材料を撤去して天然素材のものに交換したり、建築材料を通気性のないフィルムなどでふさいで化学物質の発散を抑える、といった方法があります。
カビやダニが原因の場合は、発生している場所をチェックして下地まで全部取り除き消毒して、再度新しい素材で造り直すなどの対処法になります。
しかし、カビやダニを取り去っても、根本的な解決にはなりません。問題はカビやダニが発生しやすい環境にあるからです。
シックハウス症候群の症状が重く、敏感に反応してしまう時には、リフォームで完全にその原因を絶つことは難しいです。
その時は、住み替えや建て替え、まだ、周辺環境の変更を検討した方が有効かもしれません。
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6.本当にリフォーム・増改築して住み続けるのかベストか
思い入れのある家は、傷んだり不具合が出ても長く住み続けていきたいものですよね。
しかし、前述したように、リフォームが難しい、安全性のためにもしない方が良い建物があることも事実です。
そのような建物やプランはリフォームする前に立ち止まって考える時間を持った方が良いでしょう。
6-1.設計図、施工図、付近見取図など図書類の重要性
リフォームのプランを考え、構造上の老朽度について推測し、工事をスムーズに行うためには設計図、施工図、付近見取図などの図書類が必要不可欠です。
しかしながら築20年、30年となると、図書類が残っている可能性はほとんどないのが現実です。
そうなると、実地での目視、器具類を使った調査ということになります。
壁などを壊さずに柱や梁をチェックするには、床下収納部分から床下に入ったり、点検口から屋根裏に入ったりします。
築25年くらいまでの建物なら多くはこの方法がとれますが、築50年くらいの建物の場合は、畳をはがして見ることになります。
こうなると、工事前のチェックにもある程度の予算が必要です。
さらに、大壁など壊すことができず柱や梁が完璧にチェックできない場合は、工事後の建物の「リフォーム工事以外の部分」に対する保証はできない、ということです。
築年数がそれなりに経っている建物は、リフォーム以外の部分もいつ不具合が表面化するかわからないものですが、その部分の保証がないということは不安なものです。
6-2.消費型住宅のリフォーム・増改築の必要性
戦後に多く建てられたいわゆる「消費型」の住宅のように、長持ちしないグレードの低い木や、柱と柱の間の距離に対して著しく細い材で作られた家は、リフォームの自由度が狭くなりますし、リフォームしたところで家自体の寿命を伸ばすことは難しいのです。
予算と工事の時間をかけて住み続ける価値をその建物に見い出すかどうか、その判断は建築主に委ねられています。
私の体験談
私たち営業や大工さんも、全ての人間ができることできないことを把握しているわけではありません。
個人の技術によってこのリフォームは得意だがこのリフォームは不得意という人間もいますし、自信のある特定の分野しかやらないという人間もいます。
そういった点をお客様との打ち合わせでしっかりと伝えないと、最初はできると言っていたのに、後からの話ではできなくなった、それはおかしいというクレームを受けることも、ありました。
これに関しては全く自分たちの落ち度であり反省することしきりです。
私の失敗談では、階段の場所を変えるというリフォームの希望を受けたことがありました。
しかし、これは建物の構造に大きく影響するだけに、慎重に階段を移動させる場所を検討しなければいけません。
またツーバイフォー住宅か、それとも木造軸組工法で建てられた家なのかで、階段を設置できる場所も違ってきます。
そういった細かい点を確認せずにイエスかノーかを安易に判断してしまう工務店は利用しない方が良いでしょう。
建物の構造の知識をきちんと持っている、工務店を選ぶようにしましょう。