建物のリフォームについては関係する法律が何本かあります。
守らなければならないものから、税金や控除に関わるものなど知っておくと得をするものについても紹介します。
1.建物のリフォームに関する法律
まず、住宅に関する主な法律には
- 「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」
- 「建築基準法」
- 「建築物の耐震改修の促進に関する法律」
があります。それぞれの内容を次に説明します。
1-1.住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)について
品確法については、新築では基本構造部について10年間の瑕疵保証が業者に義務づけられています。
しかし、リフォーム工事の場合は、工事保証について法的な義務付けはなく、個々の業者により保証内容は様々です。
新築と同様、一定の増築については10年間の工事保証をしている業者がある一方で、工事保証をしていない業者もあります。
リフォームの工事保証期間は、業者の信用をはかる重要な要素です。
工事保証は、リフォーム工事に対する業者の責任を投影したものともいえます。
大掛かりなリフォーム工事に対して「工事保証はない」といった業者があれば契約するのは考え直したほうがよいでしょう。
1-2.建築基準法について
建築基準法は、リフォームでも守らなければならない重要な法律です。
リフォーム工事の規模によっては確認申請が必要になります。
建築基準法では以下のような制限が定められています。
1.面積の規制
建築可能な建築面積と延べ床面積は、建ぺい率、容積率により定められています。
地区地域によってその割合は異なります。
2.高さの規制
建物高さを制限するために、地区地域によって北側斜線、道路斜線、隣地斜線などが定められています。
3.防火上の規制
構造種別、屋根・軒裏、外壁、開口部、内装の構造や材質が制限されています。
地区地域や建物の規模(面積および高さ)、道路・隣地境界線との距離によって規制の内容は異なります。
4.その他単体規制
構造耐力上の安全性や衛生面、居住性を確保するために、建物の構造耐力や採光面積、換気面積などが定められています。
以上の制限は、リフォーム工事でも必ず守ならければならないものです。
キッチンまわりの内装を変える場合、壁や天井に無垢材を張れないことがありますし、隣地境界線から3メートル以内にある1階の窓ガラスは網入りガラスにしなければならない、といった具合です。
以降で説明する申請が必要な工事でなければ、守られているかどうかチェックされることはありませんが、建物の健全性を保つためにはチェックの有無に関わらず守るべき法律だといえます。
1-3.確認申請が必要なリフォーム工事
リフォームの場合でも、その規模や内容によっては建築確認申請を出さなければなりません。
具体的には以下の場合がそれに当てはまります。
1.増築、改築、移転
防火地域、準防火地域内での増築は面積に関わらず確認申請が必要です。
防火地域、準防火地域外の10平方メートルを超えない増築では申請は不要です。
2.大規模の修繕、大規模の模様替え、特殊建築物への用途変更
木造の場合、3階以上、または延べ床面積500平方メートル超、または高さ13メートル超、または軒高9メートル超の建物は確認申請が必要です。
木造以外の場合は、2階以上、または延べ床面積200平方メートル超の建物は確認申請が必要です。
例えば、2階建て木造住宅をリフォームする場合、主要構造部の50%以上の修繕や模様替えでないかぎり確認申請は不要です。
しかし、確認申請が不要でも、建築基準法上の構造耐力上の安全性を満たさなくてもよいということではありません。
1-4.建築物の耐震改修の促進に関する法律について
建築物の耐震改修の促進に関する法律は、平成7年の阪神淡路大震災を教訓に、同年施行された法律です。
昭和56年以前に建築された新耐震基準を満たさない建築物について、積極的に耐震診断や改修を進めることとされました。
さらに、平成18年に改正耐震改修促進法が施行されました。
大規模地震に備えて学校や病院などの建築物や住宅の耐震診断・改修を早急に進めるため、数値目標を盛り込んだ計画の作成が都道府県に義務付けされる内容です。
これにより、建物の耐震改修について都道府県によって補助金を設けているところがあります。
耐震リフォームを考えている場合は、在住の都道府県の制度をチェックしてみましょう。
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2.借地に建つ家の場合の制限について
借地権の契約内容や、地主さんとの話し合いによってリフォームできる内容が決まってきます。
また、法律改正に伴う条件の違いについても把握しておきましょう。
2-1.まずは賃貸契約書と借地借家法の確認
一般的に土地の賃貸契約書には「家の増改築や建て替えを禁止する」とか、「あらかじめ地主の承諾を得ること」といった内容が書かれています。
まずはそれを確認し、契約に違反しないようにしなくてはなりません。
借地借家法は平成12年に改正されました。
それ以前の借地借家法を「旧借地借家法」と呼んでいますが、この改正以前の旧借地借家法と改正後の借地借家法で、条件が変わってきます。
2-2.旧借地借家法について
旧借地借家法では、借地権の契約期間を木造住宅で20年としています。
そして、借地権の契約期間満了後も、その上に建物が残っていれば自動的に更新されます。
そのため、こうした借地の上に建つ家の場合は、リフォームが可能です。
2-3.借地借家法について
改正された借地借家法では、更新しないかぎり、20年の契約期間満了後、地主に正当な理由があり、事前に催告することで、更新を拒否することができるようになりました。
そのため、大規模なリフォームを行っても、確実に契約期間満了後も住み続けることができるとは言えなくなりました。
その代わり、というわけでもないのでしょうが、定期借地権という権利が新たに作られました。
これは、借地権に一般的には50年間の契約期間を設け、その期間が満了すれば、その土地の上の建物を解体して借地権が消滅するというものです。
50年の期限があれば、そのなかでリフォームしながら住み続けることは、意味のないことではないでしょう。
2-4.地主が承諾してくれない場合の手続きについて
以前、
という相談が寄せられたことがあります。前述したように、増築には地主の承諾が必要です。
このようなケースは、借地権に対する評価が高い都市部で起こりえます。
土地が高く、地主がその土地を他に有効利用したいような場合、借地人にはできるだけ早く出て行ってもらいたいと考えるからです。
こんな場合、増改築は借地非訴事件手続により、通常の裁判とは違う解決の方法をとることが可能です。
これは、地主と借地人双方の利害調整を念頭に置いたもので、地主に代わって裁判所が増改築などの許可を与える制度です。
必然性のある工事であれば認められる可能性は高いと言えるでしょう。
ただ、このような話にまで発展するのはまれなことです。
基本は地主さんとの話し合いであり、そのなかで丸く収めることを第一に考えたほうがいいことは言うまでもありません。
3.不動産取得税がかかる場合
増築した場合は、不動産取得税がかかる場合があります。
あとで思わぬ出費にならぬよう、必ずチェックしておきましょう。
3-1.不動産取得税について
ポイント
不動産取得税とは、家屋の新築・増築・改築・改装を行ったときや、土地や家屋の購入・贈与・交換などで不動産を取得した時に課税される税金です。
一般的にその税額は「固定資産税評価額×4%」で求められますが、住宅および宅地(平成16年6月30日までに取得したもの)については税率が3%に軽減されます。
また、要件を満たした新築住宅であれば、評価額から1200万円が軽減され、要件を満たした中古住宅であれば、その取得した住宅の新築年月日に応じた額が軽減されます。
増築・改築・改装した場合の不動産取得税は、床面積が240平方メートル以下であれば、「(対象部分の固定資産税評価額マイナス1200万円)×3%」となります。
対象部分の固定資産税評価額が1200万円を超えるようなリフォームはまれですので、課税されないケースが多いといえるでしょう。
なお、軽減の要件については面積のほかいろいろありますので、詳しくは都道府県税事務所にご確認ください。
3-2.その他の税金について
リフォーム工事、特に増築には不動産取得税以外にも税金がかかります。
次に、その他の税金について消化します。
1.登録免許税
新築では建物を保存登記する際に登録免許税を支払わなければなりませんが、増改築・改装ではその内容によって
- 床面積変更登記
- 種類変更登記
- 構造変更登記
をしなければならないものの、これらに対する課税はありません。
2.固定資産税
増改築・改装した年の翌年1月1日の時点で固定資産税の評価額が修正されます。
課税は増改築後の面積に対してなされますから、増額します。
固定資産税は面積と構法から算出されますので、間取り変更などのリフォームについては関係ありません。
ただ、屋根材と外壁に関しては、それが不動産価格の評価に関わってきますので、これらを変更する増改築工事の場合は表示変更登記し直すと同時に、固定資産税の評価額も修正されることになります。
3.印紙税(国税)
工事請負契約書や売買契約書、住宅ローン契約書の作成の際には、契約書の記載金額に応じた収入印紙を貼って消印する方法によって、印紙税を納めなければなりません。
4.消費税
消費税は契約金額に対して8%課税されます。
これは増築に限らず、すべての工事や材料費に対してもかかるものであることはお分かりになるかと思います。
見積書のなかには、税抜きで表示しているものもあります。
数百万円の8%ともなれば、バカにできない金額ですから、表示価格が税抜きか税込かチェックしておきましょう。
以上のように、改修程度のリフォーム工事なら、消費税外の税金がかかることはありません。
ですが、中古住宅を購入して同時にリフォームする、などという場合は当然のことながら、その中古住宅や土地の取得に対する税金がかかってきます。
資金計画を立てる際には、このあたりのことも考慮しておくべきです。
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4.リフォームに適用される減税措置
住宅購入に関するものだけでなく、増改築に対するローン控除もあります。
しかし、要件が厳しく、その内容も毎年のように変わるので、直近の内容を確認しましょう。
4-1.住宅ローン減税の利用について
住宅ローン減税は、住宅の取得及び住宅とともに取得する宅地などの借入金と、増改築のための借入金が対象になります。
中古住宅の取得については、住宅ローン減税の対象になります。対象となる中古住宅の条件は、次の通りです。
- 自己の居住用のもの。
- 居住用部分が総面積の1/2以上を占めるもの。
- 家屋の総床面積(登記面積)が50平方メートル以上のもの。
- 建築ご使用されたことのある家屋で、取得の日以前20年以内に建築されたもの(マンションなど耐火建築物は取得の日以前25年以内に建築されたもの)。
増改築や大規模な修繕、模様替えについては、その対象となるための条件がさらに細かく決められています。それは、次の通りです。
【A】次のいずれかの工事に該当することについて証明されたもの
- 増築、改築、建築基準法に規定する大規模の修繕、大規模の模様替えの工事。
- マンションなどの区分所有建物のうち、その人が区分所有する部分の床、階段または壁の過半について行う一定の修繕・模様替えの工事。
- 家屋(マンションなどの区分所有にあたっては、その人が区分所有する部分に限る)のうち、居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関または廊下の一室の床または壁について行う修繕・模様替えの工事。
【B】次のすべての要件を満たすこと
- その工事に要した費用の額が100万円を超えること。
- 自己居住用部分の工事費用が、全体の工事費用の1/2以上のもの。
- 増改築後の家屋の総床面積(登記面積)が50平方メートル以上になるもの
- 居住用部分が総床面積の1/2以上を占めるもの。
以上の要件を満たし、減税を受けるためには、初年度に確定申告をすることが必要で、次年度以降も年末調整を行わなければなりません。
手続き自体は困難ではありませんが、必要な書類が非常に多いことに留意しなければなりません。
中古住宅の購入について必要な書類を下記に紹介します。
- 住民票
- 源泉徴収票
- 借入金の年末残高証明
- 家屋の登記簿謄(抄)本
- 売買契約書
- 請負契約書
- 建築確認通知書の写し
- 検査済証の写しなど
また、増改築の場合は、上記の1・2・3以外に6・7・8の書類も必要になります。
このように要件が非常に厳しいことに加え、その内容が毎年変わってしまうのでなかなか利用しづらい控除だといえます。
私の体験談
借地権などの問題は大変に難しい問題です。
恥ずかしながら我々の業界でも、法務部位以外で法律に精通している人間が非常に少ないです。
自分達から気を回して
と聞いたり
と言った質問をすることがあまりありません。
リフォームというと隣の家との問題が起こりがちですが、実際には隣の家の方の方がきちんと話を通せばわかってくれることが多いです。
それよりも問題になりやすいのは、身内の方とのトラブルです。
身内の方とのトラブルは大きなお金が絡むようなことが多く、それを通して結果的に仲の良かった兄弟や親類が絶縁状態になってしまうことも多いのです。
私たちは口を出すべきことではないので何も言えないのですが、非常に仕事がやりづらくなりますし、心も痛みます。
こういった問題を事前に回避するのであれば、できるだけ会社組織としてしっかりしている工務店にリフォームを頼んだ方が良いでしょう。
人が多い会社に頼めば法律的な問題がクリアになっているかを確認してから、施工に取り組んでくれることが多いです。
名の知れたハウスメーカーに頼むメリットの一つでもあります。